2005年度第1回研究交流会

テーマ :「イギリスに学ぶ、リスク社会の住宅問題」

 

とき  平成17年8月3日(水) 午後2時30分〜4時30分
ところ  (財)名古屋都市センター 大研修室

 

主催:(社)都市住宅学会中部支部 


「イギリスに学ぶ、リスク社会の住宅問題」    

中京大学 総合政策学部 岡本 祥浩 教授

岡本氏は、2000〜2002年までウェールズ(英国)のカーディフに留学し、イギリスのホームレス問題を研究された。今回は、ホームレス問題を通して、イギリスの社会経済の変化とその居住問題への対処について紹介していただいた。

■イギリスのホームレスの定義

  • ホームレスは、日本では「野宿者」のことをいうが、イギリスでは、1977年に制定されたホームレス法で「不安定な居住状態」と定義した。
  • イギリスの野宿者は1850人(England 1998年)→532人(England 2001年)に減少している。日本と大きく違うのは、10代後半から20代の若者が多く、その野宿期間が短い、ということ。

■ホームレス政策の変遷:福祉国家→新自由主義・1979-1996の保守党政権→第三の道

  • イギリスでは、BBCが1966年に放送したドラマ「キャシー・カム・ホーム」が反響を呼ぶ。多くの調査や報告書でホームレスが住宅問題であると主張され、ホームレス法で自治体の住宅部局がホームレスに責任を持つこととなった。
  • 1979年から1996年まで保守党政権が続く。この間、公的住宅の払い下げ、福祉的予算の削減、特に若年層の住宅手当のカット、施設の閉鎖などが行われ、ロンドンの野宿者が急増した。
  • 現政権では、若いホームレスを就業させることに力を入れている。

■イギリスのホームレス政策の性格

  • イギリスの政策では、ホームレスに住居を提供することを基盤にしている。恣意性によって適格性を判断している。つまり、好き好んで野宿をしなければ、手助けをする。
  • 住居、福祉、労働、保健、警察など多くの分野が連携することを目指している。それを、動かすために多分野協同会議を設置している。
  • イギリスでのホームレス問題の要因は、不安定就労の増大(経済構造の変化)、離婚や婚外子の増大(人口構造)、福祉国家政策→新自由主義→第三の道(政策の変化)、ドラッグ・アルコール・メンタルイルネス・離死別(個人の問題)などである。

■カーディフでは

  • ウェールズの首都カーディフは、かつて世界一の石炭積出港であったが、現在は観光、教育・研究、行政などが主要産業となっている。
  • 行政担当者は、野宿者をフルネームで把握しており、チャリティ団体と協力して、毎朝パンとコーヒーを提供している。
  • 若いうちからホームレスになるので、生活の仕方がわからない、書類も書けない人も多い。申請書類は施設の人がホームレスの若者から聞き取りしながら書く。
  • 市街地の便利なところに相談所がある。ホームレスの若者を最初は施設に入所させ、職業訓練などをさせながら、最終的には地域の一般住宅に居住させる。個人に合わせた段階的なサポートを行っている。
  • ホームレス政策を支えるチャリティ団体の中から、特徴的な二つの活動を紹介する。
ビッグ・イシュー: 1991年ロンドン発の社会運動、ホームレスに2年間雑誌を販売させて生活費を稼ぎ様々な訓練とタイアップして生活の仕方をトレーニングさせる。イギリスのハウジングアソシーエーションと連携して、空家を改造してホームレスを住まわせることも行っている。
フォイヤー: フランスからの輸入で、居住と職業訓練を一体的化した施設をつくる。個人に合わせたプログラムを作成している。

■質疑(主なもの)

Q.社会問題について、日本は欧米を後追いすると言われているが、ホームレス問題についても後追いするのか、20年後の日本も若者のホームレスが増えるか。
A.今後は、日本でも若いホームレスが増える可能性があり、日本も既にその兆しが出ている。
  なお、人種の問題でいえば、野宿者はホワイトが多くてマイノリティは少ない。ホワイトはドラッグ、メンタルイルネスなど様々な問題を抱えて野宿者になるが、マイノリティは、親戚や家族のネットワークが強くてイギリスの社会保障制度の世話になりたがらない。

Q.ホームレス問題の行政の横の連携について、イギリスは本気か。
A.イギリスは日本よりも行政の「縦割り」の性格が強く、自分の責任範囲外のことは一切行わない。そのためコーディネーター機能を住宅部局に持たせて連携に関する責任を明確にし、連携が実現するような仕組みづくりに努めている。


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